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答え:
原則として各従業員に合意を得たうえで、就業規則を変更しなければなりません。
解説:
労働契約とは、言うまでもなく「契約」です。つまり法的には労使とも対等の立場で、労働契約を締結していることになります。つまり、普通に私人間で商取引で契約をするのとなんら変わりません。
このような一般の契約は、いうまでもないことですが、当事者の一方が勝手に契約内容を変更することはできません。これは民法一般原則として当然のことです。
労働契約についても同じことが言えます。そのことは労働契約法第9条にも次のように明記されていおります。
「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。…」
しかしながら、我が国においては、労働契約法第10条に例外規定が置かれています。
つまり、合意をしなくても一方的に会社が就業規則を変更することによって、労働契約を不利益に変更できるというものです。
労働契約第10条を基に述べるとすると、次のようなイメージになります。
労働契約法第10条に記載されている考慮要素を総合勘案した場合、合理性がある場合には使用者が一方的に就業規則を変更することにより労働契約を不利益に変更できるということです。
では、例外規定の労働契約第10条は容易に適用できるのでしょうか?
それは難しいというのが答えです。詳しくは労働契約第10条をご参照いただきたいのですが、理由を簡単に申しますと、考慮すべき要素が多岐にわたるとともに特に賃金に関する不利益変更は最高裁判例によりかなりハードルが高くなっているからです。
ちなみに考慮する要素の中には、「労働組合等との交渉の状況」についても吟味されることになります。
したがって、労働者と不利益変更について話し合うのが面倒だからといって、それを省いて不利益変更を強行することは、極めてリスキーです。
ですから、労働契約第10条の例外を適用するにあたっても、会社としてしっかりとやるべきことはやる必要があるということを銘記してください。(もっとわかりやすい内容はブログに記載がありますのでご覧ください。「大事なことは大抵面倒だ」)
当事務所は、就業規則の変更についても業務を承っておりますが、その際に不利益変更(特に賃金の減額が絡む場合)については、個別合意書の作成と改定に向けての進捗スケジュールをお示しさせていただきます。
なお、各従業員への説明及び合意手続きについては、原則として各企業の担当者様が行っていただきますようお願いしております。ご了承ください。
答え:
法律(強行法規)なので、適用を免れることはできません。
解説:
確かに、労働基準法が制定された当初(昭和22年4月)と現代を比べれば、産業構造そのものがかなり多様なものとなりました。したがって、例えば、労働時間をカウントして賃金に反映させることが果たして妥当なのか?という疑問が生じることも無理からぬことかと思います。
例えば、短時間で高生産性のある従業員がいる一方で、生産性が低いにもかかわらず、残業して残業代がかさむことなどが挙げられると思います。また、労働時間と生産量が必ずしも一致しないような専門性を生かした特殊な業種もあることでしょう。
しかしながら、それでも結論からすれば、法律(強行法規)ですので、遵守する必要があります。
では、強行法規とは何でしょうか?
それは、遵守しなければ罰則を科すという法律のことです。要するに刑法的側面があるのです。
つまり、労働基準法の規定に納得がいかないからといって、守らないわけにはいかないということになります。
では、労働基準法を適用しながら、経営を有利に運営するためにどのように解決していったらよいのでしょうか?
基本的には次の点が挙げ得られます。
・労働基準法の合法的な制度(労働時間など柔軟に運用できる制度)を活用する。
・賞与で生産性の高い従業員と低い従業員の差をつける。
少し考えただけでも、少なくとも以上2点くらいは思い浮かびます。
このように今の労働基準法の下でも対応できる策はいろいろとあるものです。
まずは、専門家から意見を求める必要があると思います。
しかし、労働基準法も人がつくったものです。もちろん完璧はありません。
社会的な矛盾も当然はらんでいることでしょう。
数年前ホワイトカラーエグゼンプション(一定水準以上の高額給与をもらっている管理職は残業代を支払わない制度)が提唱されたのもわからない話ではありません。
しかしながら、法理論を根底から考える場合、どうしても必要となる考えは・・・
「所詮、経営者と労働者は対等ではない」ということです。
これはどういうことでしょうか?
それは、経営者はいろいろな事業展開をしたりして資金獲得の方策を自由に考えることができますし、基本的にはそれに要する資金も潤沢です。また、役員報酬も相当高額なことが一般的です。さらに働く時間を指示されたり、働き方を命令されることもありません。
翻って労働者は、会社に労働力を売って賃金を獲得する以外に方法がありません。
これは、以下の事情が労働者に課せられていることからも自明の理となります。
・業務命令は、ある意味絶対服従する必要がある。
・正社員には兼業が禁止されており、それが合法となることがほとんど。
・遅刻や早退が許されないことがほとんど。
・一定時間、仕事をするために毎朝会社に赴いて夕方まで拘束されることがほとんど。
以上、このように一つの企業に縛られるのが一般的です。
こういった場合、おのずと経営者と労働者は対等ではないと結論できます。
ここを土台として考えた場合、どんな問題が出てくるのでしょうか?
それは、
「社会的立場が高い経営者が、権利濫用して労働者をいいようにこき使う」
「いらなくなったら即クビ(解雇)」
ということがどうしても起きてくるのです。
このことは、「ああ野麦峠」や「蟹工船」のとおり、既に歴史的に明らかです。
また、現在生じているサービス残業などは、程度の差こそあれ、同じ現象です。
その弊害を除去するには、やはり現状では「法により規制をかける以外に方法はない」というのが、法理論上の建付けです。(もちろん付随的に助成金制度などで企業支援することなどもありますが・・・)
現行の労働基準法には矛盾をお感じの経営者の方もおられると思いますが、上記の事情をお察しいただき、少しでも労働基準法にご理解いただければ幸いに存じます。
当事務所は、飽くまで現行法を遵守したうえで、経営に有利な人事政策をどのように決定できるかを考えていきます。
よろしければご相談ください。